■感染性胃腸炎とは
感染性胃腸炎とはウイルスや細菌に感染することで胃腸の働きを悪化させ、嘔吐や下痢が起きるのが特徴です。
ウイルス性胃腸炎は「おなかのかぜ」や「はきくだし」「嘔吐下痢症」などと呼ばれウイルスの増える冬場に感染が多くみられ、細菌性胃腸炎はいわゆる食中毒として夏場に増える傾向にあります。
■ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎を引き起こすウイルスは、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどが代表的です。これらは保育園などで広がりやすいので注意が必要です。個別、特別な治療はありません。整腸剤を内服し消化の良いものを食べ、水分をこまめに摂取し脱水を防ぐこと、そして感染を広げないように手洗いをしっかりする重要です。
ロタウイルス
乳幼児が多く感染するウイルスで、２～4日の潜伏期間の後、下痢や嘔吐を起こし脱水症状になることがあります。
ロタウイルスは、ワクチンがありますので忘れず定期予防接種を行いましょう。
ノロウイルス
11月頃から流行が始まり、冬場にピークを迎えます。
潜伏期間は1日～2日と短く、症状は嘔吐と下痢ですが、比較的早く症状は回復します。
しかし、乾燥や熱、アルコールにも強く、感染力が非常に強いため注意が必要です。
また、嘔吐物や排泄物にも大量にノロウイルスが含まれている可能性がありますので汚物の処理も感染対策を行い感染を防ぎましょう。
検査は便で行います。ノロウイルスの検査対象は3歳未満または65歳以上です。それ以外は原則自費検査になります。
アデノウイルス
6歳以下のお子さんの感染が多く、潜伏期間が３～10日と比較的長く発熱、嘔吐、下痢の症状も他のウイルスに比べ長く続く傾向があります。
■細菌性胃腸炎
細菌性胃腸炎を引き起こす細菌としては、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなどがあり、口を通して汚染された食べ物を食べて感染するもので、いわゆる食中毒です。
夏から秋にかけて温度・湿度が高いため細菌が繁殖しやすいため流行します。
■感染性胃腸炎の治療
ウイルス性胃腸炎は有効な治療薬はなく、対症療法が基本となります。
細菌性胃腸炎も基本的には対症療法ですが、症状に応じて抗生物質を処方します。
下痢が激しいので下痢止めを使いたくなるかもしれませんが、下痢はウイルスや細菌を排出する重要なもので下痢止めは極力使用を控えましょう。
胃腸炎の治療で重要なポイントは、脱水症状のケアです。
スポーツドリンクや経口補水液など少しずつ飲み脱水症状にならないようにしましょう。
嘔吐がひどく口から食べたり飲んだりができない場合は早めの受診をしてください。
■受診の目安
次のような時は特に強い脱水症状が起きている可能性がありますので早急に受診しましょう。
- 尿が出ない、泣いても涙が出ない
- 呼吸が荒い
- 顔色が悪く、ぐったりしている
- 眼が落ちくぼんでいる
その他、嘔吐が続いたり血便が出るようであれば一度受診してください。
■感染性胃腸炎の予防
通常の風邪と同様、手洗いうがいが特に重要です。外出後やトイレの後、調理前には必ず石けんで十分泡を立てて洗いましょう。
ウイルス性胃腸炎の場合は他の人に移してしまう可能性がありますので、保育園や幼稚園、学校などには人が集まる場所には行かないようにしましょう。
また、便や吐物を処理する場合は、使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用して片づけましょう。その後塩素系漂白剤を薄めたもので消毒をし、手洗いをしっかりしましょう。
細菌性胃腸炎は、主に食品調理の衛生管理や加熱不足が原因となるので調理器具の洗浄・殺菌やお肉などをしっかり加熱して細菌を増やさないようにすることが大切です。
バーベキューや焼き肉店などで肉をとる時は必ずトングを使用してください。
■登校・登園の基準
感染性胃腸炎は第1～第３種の感染症には該当しないので基本的には出席停止にはなりませんが、学校長の判断で流行状況により出席停止の措置を取ることがあります。
しかし、登校・登園は医師の判断に基づいて判断されるのがよいです。
半日で2回以上の下痢・嘔吐がある場合はお休みの目安です。
■ロタウイルス感染症とは
ロタウイルス感染症は、1月から4月にかけて流行するウイルスで感染性胃腸炎を引き起こします。特に生後6ヵ月から2歳の乳幼児に多くみられ、この時期の急性下痢症の最も主要なウイルスになります。冬季にしばしば保育園や幼稚園で流行します。
大人の方も感染しますが、発症しなかったり、軽症ですんだりしますが、お子様が感染すると重症化することがあります。
■ロタウイルスの感染経路
ロタウイルスは感染力が非常に強く、10個程度のウイルスでも感染が起こります。感染経路としては、汚染されたおもちゃやドアノブなどを触った手から口に入ったり、感染者の便や嘔吐物に含まれているウイルスから感染します。
■ロタウイルス感染症の症状
ロタウイルスの潜伏期間は約2日間で、嘔吐、下痢、発熱が主な症状で、時に痙攣を起こすこともあります。白色の水溶性の下痢便が特徴で、激しい下痢のため急激に水分を失い脱水症状を引き起こしやすいので気を付ける必要があります。
■ロタウイルス感染症の治療
ロタウイルス感染症に直接効く薬はありません。整腸剤が処方されます、食事は便性を見ながら控えめに。脱水を防ぐために水分をこまめに補給しましょう。脱水症状がひどい場合には医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になります。
■ご家庭での注意点
患者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれていますので、処理には十分注意する必要があります。汚物を処理する場合は、使い捨ての手袋を使用し処理後には手洗いを行いましょう。流水での十分な手洗いをおすすめします。
ロタウイルスは、アルコールへの抵抗力が強いため熱湯や市販の塩素系漂白剤を50倍~100倍に薄めて使用してください。ウイルスは乾燥すると空気中を舞い、口に入って感染することがあるので、便や嘔吐物を乾燥させないことが重要です。
■ロタウイルスの予防
ロタウイルスはワクチンによって予防することができます。
2020年10月より定期接種が開始され自己負担がなくなりました。生後2カ月から接種が可能です。同時接種の観点からも生後2カ月になったら接種を行いましょう。
ロタウイルスワクチンは、感染による嘔吐下痢症を防いだり、症状を軽くして点滴や入院が必要な重症例を約90％減らすと言われております。
■子どもの便秘について
便秘とは、さまざまな要因により排便回数や便の量が減り便が滞った状態や、便が出にくく、排便するのに苦痛を伴う状態のことを言います。
また、便秘のために治療が必要な状態を「便秘症」といい、この状態が１～2カ月以上続いた場合には、「慢性便秘症」と言います。
子どもの便秘症は珍しいことではなく、離乳開始や終了時、トイレトレーニングの時期、学校へ入学した頃に始まることが多いと言われています。
■便秘の放置は厳禁！
便秘症は放置しておくとだんだん悪くなることが多い病気です。
- 便が硬くなり排便時に痛い思いをする
- 排便を怖がったり、嫌がるようになる
- 腸にうんちが残ったままになり、直腸が広がることで脳への刺激が伝わらず便意が起きにくくなる
- 排便されないため、うんちがどんどん溜まり更に便が硬くなってしまう
このように便秘症は悪循環を起こすので早めの治療が大切です。
■便秘症の治療
便秘症は、便の回数や硬さなどの問診と触診などによって判断します。
そして、まずは悪循環を断つために便が詰まっているようであれば、浣腸などにより排便を促します。
乳幼児であれば浣腸を使用することが難しいため、ワセリンを塗った綿棒で肛門の周りを優しく刺激して排便を促す綿棒浣腸を行います。
その後は、便を柔らかくするお薬や整腸剤を使用して継続的にうんちが出やすい環境を整えていきます。
■ご家庭での注意点
便秘の治療では、お薬などの力を借りることも大切ですが、生活リズムの乱れを治すことや排泄の習慣をつけることが大切になります。
また、トイレトレーニングなどでは痛みだけでなく、失敗した時に叱ったりすると心理的にトイレに行くのを嫌がったり、我慢するようになることもありますので、良い点やできるようになったことを褒めてあげることが大切です。
■腸重積とは
重積は生後3カ月から2歳未満のお子さまによくみられ、1本の長い管である腸の一部がめり込んで重なる状態になる状態で、腸が重なった部分は腸閉塞を起こします。
また、めり込んで重なった部分の腸管は血流が止まってしまいそのままになると壊死してしまう怖い病気です。
緊急を要する病気です。夜間でも受診が必要です。
■腸重積の症状
腸重積の症状は、急に腹痛で激しく泣きはじめ、次第にぐったりして顔色が真っ青になったり嘔吐したりします。また、腸の粘膜が傷つくためイチゴゼリーのような血便がみられます。
子どもは症状をうまく訴えられないので、突然の不機嫌や激しく泣くことを繰り返す場合には医療機関を受診してください。
■腸重積の治療
腸重積の治療で行うのが、高圧浣腸です。肛門から薄めたバリウムを注入し、圧力で腸を元に戻す方法です。高圧浣腸で元に戻らない場合や、長時間経過して危険を伴う場合は、病院にて手術が必要です。
ただし、高圧浣腸により治療ができても再発することがありますので注意深く観察する必要があります。
